2005年10月25日

ヴェスター特別編〜エミリーとフライヤ(5)

その晩、エミリーの機嫌はずっと悪かった。
エミリーはラルフの部屋に来て、ずっとラルフに怒鳴り散らしていた。
「お兄ちゃん、絶対にもっと友達は選んだほうがいいよ。」
「でも、エミリー、フライヤに告白された時、まんざらでもなさそうだったじゃんか?」
「冗談言わないでよ。
私は、あんなスケベな人は、絶対にお断り!!!」
エミリーは完全に激怒していた。
「わ、わかった・・・でも、俺に怒ることないだろ。」
「あのフライヤって人のせいで、あれから友達から、ひやかしの電話かかってくるし、完全に周りに誤解されてるし、ああーっ、明日からどうしよう。
友達に、変な噂広められそうで、もうやだーーー!!!」
エミリーはラルフに言うだけ言って、部屋に戻っていった。
「ったく、別にそんなこと、どうだっていいじゃんか。」
ラルフはため息をつきながら、部屋の扉を閉めると、フライヤが散らかしていった部屋を片付ける。
その時、フライヤが持って帰るのを忘れていったチップを発見する。
(これは・・・罠か?フライヤの罠なのか?)
ラルフは、一瞬、見たい衝動にかられたが、隣にいるエミリーのことを考えると、とても見る気になれなかった。
(見てるところをエミリーに見られたら、それこそ害虫扱いされそうだ。)
ラルフは、チップをしまうと、明日フライヤに返すことにした。

翌朝・・・

ラルフは、朝早くから起きて、母親の朝食の準備をしていた。
「ふわぁぁあ」
エミリーはパジャマを着たまま、大きなあくびをしながら、2階から降りてくる。
玄関は、階段のすぐ傍にあるが、そこに誰かが立っていることに、エミリーはしばらく気づかなかった。

「おはよう、エミリーちゃん。」
ふと、玄関の方から声がしたので、慌てて振り向くと、なんとそこにはフライヤが立っていた。
「ひっ!?」
思わず、エミリーは悲鳴に近い声を上げる。
「エミリーちゃん、かわいいパジャマ着て寝てるんだね。」
フライヤがそう言うと、エミリーは怖くなり、ラルフのいる部屋に走っていく。
「お、お、お兄ちゃん・・・」
「ど、どうしたんだ、お前?」
「フライヤさんが、来てる。」
「な、何だと!?」
ラルフは玄関の方を覗き込むと、フライヤが笑顔でラルフとエミリーに向かって手を振っていた。
「ア、アイツ・・・マ、マジか?」
ラルフは、驚く。
「お兄ちゃん、私、あの人、怖いよ。」
エミリーがラルフの背中を揺する。
「わ、わかったよ。アイツには、もう朝来ないように言っておくから・・・」
ラルフはそう言うと、玄関に向かう。

「よお、ラルフ、昨日チップ置いて帰っちゃったんだけど、見たか?」
「見てねーよ。
それより、フライヤ、エミリーが怖がってるから、今後、こういう真似はやめてくれな。」
「えっ、どうして、怖がるのさ?」
「怖がるだろ、普通に。」
「わかった、わかった、朝、家に来るのは、もう止めるから。
エミリーちゃんにも謝っておいてよ。」
フライヤはそう言うと玄関の戸を開ける。
「あっ、そうだ、ラルフ、チップはいつ返してくれてもいいから・・・」
「いや、いますぐ返すよ。」
ラルフはそう言うと、フライヤにチップを渡した。
「たっぷり堪能してから、返してくれたらいいのに・・・」
「もういいから、さっさと学校に行け。」
ラルフはフライヤを玄関から追い出すと、戸を閉めた。
「ふう。」
その時、背後に人の気配を感じた。

「へえ、お兄ちゃんも、やっぱり、ああいうチップ見るの、好きなんだ。」
エミリーが冷たい目で、ラルフの方を見ていた。
「俺は見てないって言うの。」
だが、エミリーは全く信じていなかった。
「ドスケベ!!!」
エミリーはそう言うと、2階の方に黙って上がっていった。
「オイ、エミリー・・・ったく、アイツは全く俺の言うことを信じてないな。」
ラルフは、エミリーが2階に上がっていくのを見て、一人ぼやいでいた。

これ以降、ラルフの家に直接来ることはなくなったフライヤであったが、その歪んだ愛情がとどまる事はなかった。
「エミリーちゃん、待ってるよ。」
フライヤはそれ以降、朝早くにジュニア・ハイスクールのすぐ傍にある高台に来ては、エミリーの登下校の様子や、教室の中を双眼鏡で覗き込んだり、写真を撮ったりするようになった。
エミリーがそのことに気づくのは、しばらく先のことになるのであった。

〜完〜


数日後、ラルフの父親が家に帰ってきた時・・・
「お父さん、実はこの間、お兄ちゃんが、ものすごくいやらしいチップ見てたんだよ。」
エミリーがエリックにちくると、ラルフは慌てる。
「だ、だから、俺は見てないんだって・・・」
「ラルフ!!」
その時、父エリックの鋭い声が聞こえてくる。
「な、何、父さん?」
「ウム、お前ももうそんな年になったのか。
そんなに慌てることはないだろう。俺がお前の頃は、毎日のように見てたぞ。」
エリックはそう言うと、ガハハハと豪快に笑う。
それを聞いて、ラルフもエミリーも笑うエリックを、しばらく呆然とした表情で見つめていた。
posted by VesterProject at 00:22| 大阪 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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