2005年10月19日

ヴェスター特別編〜エミリーとフライヤ(4)

「ちょっと、お兄ちゃん。」
その時、一階から、エミリーの呼ぶ声が聞こえてくる。
「な、何だ、エミリー?」
ラルフはそう言うと、慌てて一階に駆け下りる。
エミリーの顔は、まだ少し赤かった。
「オイ、エミリー、勘違いしてるかもしれないけど、あれを見てたのはフライヤだけだからな。」
「もう、いいよ。それより、お兄ちゃんに頼みがあるんだけど・・・」
「何だい、頼みごとって・・・」
いつの間にか一階に下りてきていたフライヤがエミリーに声をかける。
「フライヤ、お前、いつの間に?」
いつの間にか後ろにいたフライヤに、ラルフは驚く。
エミリーは無言のままでいた。
「初めまして、俺、フライヤ=メイソンっていいます。ラルフの妹のエミリーちゃんですね。よろしく。」
フライヤはそう言うと、エミリーの手を握ろうとするが、ラルフがフライヤの手をはたく。
「エミリー、コイツは放っておいていいから・・・。それより何だ、頼みごとって?」
ラルフが声をかけると、エミリーはようやく我に返る。
「えっ、ああ・・・そうだった。あのさ、実は、今からジュニア・ハイスクールに来てほしいんだ。」
「えっ?何しに?」
「まあまあ、いいからいいから・・・」
エミリーはそう言うと、ラルフの手を引っ張る。
「オイオイ、何なんだよ、一体?」
ラルフはエミリーに引っ張られて玄関を出ると、そこにはエミリーの友達が数人待っていた。
「遅いよ、エミリー。」
「ゴメン、でも、お兄ちゃん連れてきたから・・・」
エミリーはそう言うと、ラルフの手を引っ張る。
「オイ、これは一体どういうことだ?」
「まあまあ、それは歩きながら説明するから、とにかく来てよ。」
「わ、わかったよ。」
ラルフはエミリーとその友人達に手を引かれたまま、家を飛び出していった。

ジュニア・ハイスクールに着いたラルフは、非常に機嫌が悪かった。
「ったく・・・何で、俺がジュニア・ハイスクールの体育倉庫の整理をやらなきゃならないんだ?」
「だって、跳び箱とか重たいんだもん。
整頓ロボはしょっちゅう壊れるし、うちのクラスの男子どもは、さぼって帰っちゃうし・・・
女の子だけじゃキツイんだよ。」
エミリーがそう言うと、ラルフは仕方がないといった表情を浮かべる。
「まあ、そう言うことなら仕方がないか・・・。
それにしてもだ・・・何で、フライヤ、お前まで来てるんだ?」
ラルフはフライヤの方をジト目で睨む。
フライヤはエミリーの隣に立っていた。
「いや、お前だけじゃ大変だと思って、俺も手伝いに来たんだよ。
エミリーちゃん、俺も頑張るからね。」
フライヤは笑顔でエミリーの方に手を振る。
「ど、どうも・・・」
エミリーは、固まったまま、フライヤにそう答える。

何だかんだ言って、ラルフという男は、人がいいのか、体育倉庫の整理を一人で始める。
「確かに、これらを女の子達だけでやるのはキツイな。」
ラルフは、跳び箱や、ボールなどを片っ端から、言われた場所に整理していく。
「オイ、これはどこにおけばいいんだ?」
ラルフが尋ねると、エミリーの友達の女の子が場所を教える。
とその時、エミリーの姿が見当たらないことに気がつく。
「ん? エミリーはどこに行ったんだ?」
「エミリーなら、あのフライヤって人と、あそこでいちゃついてますよ。」
エミリーの友達が、指差す方を見ると、フライヤがエミリーを口説いていた。

「エミリーちゃん、僕と君との出会いに、何か、運命的なものを感じるんだよ。」
フライヤがエミリーに話すと、エミリーの友達から黄色い声が上がる。
「きゃー、エミリー、告白されてるよ。」
その友達のひやかしが恥ずかしいのか、エミリーは真っ赤な顔で下を俯く。
「ねえねえ、フライヤさん。エミリーのどこが気に入ったんですか?」
エミリーの友達の一人がフライヤに尋ねると、フライヤはエミリーの方を見つめ、

「全てさ。」

と言うと、またしても女子達から甲高い声が上がり、エミリーはますます恥ずかしそうな顔を浮かべる。
「オイ、いい加減にしろ。」
ラルフがフライヤの頭を思い切りはたく。
「これはこれはお兄さん、もう倉庫の片付けは済んだのか?」
「お、おにい・・・、こ、こいつ、エミリーと本気で付き合うつもりなのか?
エミリー、こうなったら、バシッと言ってやれ。」
ラルフがエミリーにそう言うと、フライヤもエミリーの友達も、その場にいた全員がエミリーの方を見る。
「わ、私は・・・ゴ、ゴメンなさい・・・」
エミリーはそう言うと、あまりの恥ずかしさから、体育倉庫を飛び出す。
「オイ、エミリーはお断りだってよ。」
ラルフはそう言うが、フライヤは全然堪えていない。
「フフッ、エミリーちゃん、皆の前で言うのが恥ずかしかったんだよ。本当にかわいいな。」
そう言うと、エミリーの去っていった方を見て、笑みを浮かべる。
「お前、本当にこたえないな。」
エミリーの友達が、フライヤの発言を聞いて、また甲高い声を上げる。
「お前らも、いい加減うるさいんだよ。」
ラルフは、エミリーの友達にも、キレかかっていた。
posted by VesterProject at 15:02| 大阪 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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