2005年10月16日

ヴェスター特別編〜エミリーとフライヤ(3)

ラルフは、寝たきりの母親の部屋に向かっていた。
「ラルフ、帰って来てたの?」
「ああ、母さん、ちょっと友達が家に来てたもんだから。」
「そう、ゴメンね、ラルフ、せっかく友達が来てるのに、何もしてやれなくて・・・」
「そんなこといいから、母さん。
それより、今日は朝から少し熱が出てたし、もうグッスリと寝た方がいいよ。」
ラルフはそう言うと、引き出しから母親の薬を出す。
「でも、今日はお医者さんが来る日だから・・・」
「あっ、そっか、すっかり忘れてた。」
その時、家のチャイムが鳴り響く。
「あっ、医者が来たみたいだ。母さん、ちょっと待ってて。」
ラルフは慌てて玄関の方に向かう。

玄関には、いつも往診してくれる女医が待っていた。
「あら、ラルフ君、久しぶり。今日は帰ってくるのが随分早いのね。」
女医がラルフに声をかける。
「こんにちは、母さんはいつもの部屋にいますよ。」
ラルフは、女医を家に通すと、母親の部屋まで案内する。

「ただいま。」
そこにエミリーが帰ってくる。
エミリーは、玄関に見慣れない靴が一つあることに気づく。
(あれ、お医者さん以外にも、誰か来てるのかな?)
「ちょっと、エミリー、早くしてよ。」
背後から、エミリーに声をかけるのは、エミリーの友達だった。
「ゴメン、すぐにお兄ちゃん、呼んで来るから、少し待っててね。」
エミリーはそう言うと、慌てて2階にかけ上がる。
自分の部屋にカバンを投げ入れると、ノックもなしに、ラルフの部屋の戸を開けた。
「ちょっと、お兄ちゃん、お願いが・・・」
途中まで言って、エミリーは顔を真っ赤にしてその場に固まる。
中にいたのはラルフではなく、フライヤだった。
部屋でチップを見ていたフライヤも固まる。

『あっ・・・ああっ・・・ダメェ・・・』

固まる二人がいる部屋の中を、スクリーンからの音声だけが、しばらく鳴り響いていた。

「えっと、あの・・・お、お兄ちゃんはどこに行きましたか?」
しばらくして、ようやくエミリーがフライヤに声をかける。
「えっと・・・ちょっと前に、一階の方に降りてったけど・・・」
「そ・・・そうですか・・・」
エミリーはそう言うと、ラルフの部屋の扉を閉めた。
次の瞬間・・・

ドタドタドタ・・・
エミリーはものすごいスピードで階段を駆け下りる。

「何だ、エミリー帰ってたのか?」
階段の音を聞いて、ラルフがエミリーに声をかける。
「お兄ちゃん・・・」
「な、何だ、エミリー?」
いつもと様子の違うエミリーを、ラルフは不思議そうな顔で見つめる。
だが、
「ドスケベ!!」
エミリーがラルフにそう言い放つと、ようやくラルフはエミリーが何を見たのか理解する。
今度は、ラルフが慌てて2階にかけ上がる。
ドタドタドタ・・・

「何だか、今日はいつもより賑やかみたいですね。」
女医がラルフの母親に話しかける。
「ええ、ラルフが珍しく友達を連れてきているみたいなの。」
「あら、珍しいわね。」
二人は、そう言いながら、階段の音を微笑ましい表情で聞いていた。

ラルフは、部屋の戸を勢いよく開けると、フライヤに向かって怒鳴った。
「オイ、お前、今チップ見てただろ?」
だが、フライヤはボーっとしていた。
「なあ、ラルフ、今、部屋に来た子がエミリーちゃんなのか?」
「そうだよ、それがどうした?」
「・・・・・・めちゃくちゃかわいいじゃないか。何が小憎たらしいだよ。」
フライヤは目を輝かせて、ラルフにそう話す。
「そ、そうか?」
「ああ、はっきり言って、俺、一目ぼれした。」
フライヤは真っ赤な顔で立ちすくんでいたエミリーの表情を思い出していた。
「オイオイ、エミリーは14歳だぞ。」
「年なんて関係ないよ。それに2つ違うだけじゃないか。」
フライヤはラルフにそう話すと、またもボーっとした表情で、エミリーのことを思い出していた。
posted by VesterProject at 22:17| 大阪 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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